ともふみ備忘録

元日ナレ生の役者が演技理論を語る。

不名誉?大根役者って何?新訳「大根役者」

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演技をやる者として言われたくない言葉第1位が『大根役者』です。

だけどここで疑問が。

そもそも大根役者ってどういう意味?

 

ということで今回は「大根役者」についてまとめました。

 

演技が下手な人=大根役者?

世間の認識では間違いなく「演技が下手=大根役者」でしょう。

では演技が下手とはどのような状態か。

たぶん一般的には「棒読み」が挙げられます。

 

まぁ確かに棒読みと言われるといい気はしません。

 

しかし演技の上手い下手はその「棒読み」だけで測れるものでしょうか?

 

演技下手な俳優&女優ランキング36選【大根役者・2020最新版】 | RANK1[ランク1]|人気ランキングまとめサイト~国内最大級

 

例えばこのランキング。

見てみると錚々たる顔ぶれです。

確かに「あ・・・」と思う人は何人かいます。

まぁ本業じゃなかったりしますからね・・・

 

だけど佐藤健さんや藤原竜也さんが果たして「棒読み」かと言われると絶対に違いますよね?

台詞に感情が篭っていないとか、抑揚がないとか色々書かれています。

 

しかし私たちの日常生活において、全ての言葉に100%の感情、100%の抑揚を乗せて喋りますか?

そんな人がいたらうるさくて仕方ないですよ。

抑揚のない台詞、それは言い換えれば誇張していない日常的な喋り方、つまり自然すぎる場合があります。

 

渡部篤郎は棒読みなのか?

渡部篤郎さんなんかは、その最たる例ではないでしょうか。

渡部篤郎さんは演じる役にもよりますが、大声で喚いたり驚いたりしませんよね?

いつもボソボソ喋っていますがそれが自然に入ってきます。

私たちの日常的に使う喋り方に最も近いのではないでしょうか。

 

それを棒読みといってしまうのは、いささか暴論のように思います。

 

「木村拓哉は何を演じてもキムタク=大根役者」は愚か

 

木村拓哉さんを評価する際によく「どんな役をやらしても同じ」とか「何を演じてもキムタク」という声があります。

これもまた難しい問題で、例えばカメレオン俳優と言われている菅田将暉さん。

菅田将暉さんは色々な役柄を演じられていますが、何を演じても菅田将暉さんではありませんか?

 

それは演技が上手いとか下手とかではなく、私たちが菅田将暉さんを「菅田将暉」として認識している以上、何を演じていても「菅田将暉」が演じる役なんです。

 

言い換えれば俳優としての「ブランド」

例えばお馴染みのハイブランド「ルイ・ヴィトン」はあのモノグラムがある限り「ルイ・ヴィトン」ですよね?

それを「ルイ・ヴィトン」のモノグラムをつけたまま「グッチ」になれ!って言っているようなものです。

つまり「菅田将暉」という前情報と視覚情報があるかぎり、「菅田将暉」という枠から抜け出すことはできないのです。

 

反対に知名度のない役者がAという作品で警察、Bという作品で犯人、Cという作品で被害者を演じたとします。

しかしこれら三つの役を演じているのが一人の役者であることに気付く人は少ないと思います。

それは誰も知らないから、当然ですよね。

 

だからと言ってその役者が「カメレオン俳優」という評価を得られることは無いと思います。

その理由は単純で「ブランド」ではないから。

ノーブランドのTシャツを見分ける人なんていませんよね?それと同じです。

 

ブランド力が強ければ強いほど、それは私たちがその役者に対し「イメージ」を持ち、そのイメージというフィルターを通して見てしまいます。

その結果、「キムタクは何をしてもキムタクだ!下手くそ!」といういかにも論理性に欠けた結論にいたってしまうのです。

 

いささか極論ではありますが「キムタクがキムタクにしか見えない=棒演技」という考えがいかに論理性に欠けるか理解できたかと思います。

 

そもそも大根役者の意味って?

「大根役者」という言葉の由来は諸説あります。

 

dictionary.goo.ne.jp

 

・演技の素人=大根の白さに例えた

・馬の足に似ているから(昔は馬の足役から下積みしたらしい)

・大根おろし=役を降ろされる

・食当たりしない=当たらない役者

 

この中でも最も有名なのは「食当たりしないから」というものです。

大根はいくら食べても食当たりしません。

時にぴったりのはまり役を得た役者を「当たり役」と言ったり、「この役者が出ている作品は当たり」と評価されることがあります。

つまり「何をやらしても当たらない役者=大根のように食当たりしない=大根役者」という説です。

こんな評価をされたら堪ったもんじゃないですね。。。

 

実は良い意味?な大根役者

「当たらない役者」を「大根役者」と言う説をご紹介しました。

要するに「当たらない役者=当たり障りのない役者=普通の役者」というわけです。

 

だけどこの普通の役者って凄く大事だと思いませんか?

 

個性のない役者=どんな作品にも馴染む役者ってことです。

 

少し前に「バイプレイヤー」という言葉が脚光を浴びました。

いわゆる「脇役」と呼ばれる役を演じる人が多い人たちのことです。

 

そもそもドラマや映画の主人公って、現実世界にいたらかなりヤバイ奴が多いと思いませんか?

極端に明るかったり極端に不幸だったりと、中々感情移入できない時ってあると思います。

半沢直樹なんてその最たるもので、あんな人が組織にいたらメチャクチャじゃないですか?

主人公っていうのはそれぐらいぶっ飛んでいないと物語が動かないんですね。

だからこそ物語の主人公足り得るのです。

 

しかし脇役と呼ばれる役柄、例えば主人公の親や友人、会社の同僚などですね。

その人たちって常識人が多くないですか?すごく普通の感性をしているというか。

常識的であるが故に損をすることも少なくありません。

 

そのな普通の人を演じるのがバイプレイヤーと呼ばれる人たちです。

 

このバイプレイヤーたちは変に目立ってはいけません。

それは脇役だから。

あくまで主人公の引き立て役なんです。

つまり当たり障りのない役を演じているわけです。

 

ここで始めに戻るのですが、「当たらない役者=当たり障りのない役者=普通の役者」であるならば、大根役者って凄く大事だと思いませんか?

 

また「抑揚のない台詞、それは言い換えれば誇張していない日常的な喋り方、つまり自然すぎる」と説明しました。

これを大根役者と評価するならば、「大根役者」というのは日常を演じられる役者

 

これって役者にとって最大級の褒め言葉だと思いませんか。

 

もしかしたら芝居経験がないとピンと来ないのかもしれませんが、普通のことを普通に演じるってものすごく難しいのです。

それは「無意識の意識化と無意識化」という記事でも解説しました。

 

www.tomofumiblog.info 

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大根役者って実はすごいのかもしれません。

 

世の中の「大根役者」に騙されるな!!

ということで今回は、「大根役者」について私なりの考えを紹介しました。

世の中の大根役者評がいかに論理性に欠けるか、そしてその特に深く考えもせずに「大根役者」と勝手にこき下ろす記事がいかに傍若無人であるか、少しはお伝えできたかと思います。

 

世の中の評価に騙されず、自分なりの尺度をもって作品を鑑賞してほしいと思います。