芝居の本質に自力でたどり着くのは難しい。
だから私たちは養成所に通うし、情報を収集する。
学べば学ぶほど、理想は遠のいて行くものなのです。
前回はこちら!
いよいよ始まる本格的な芝居のレッスン
7月も過ぎると、少しずつお芝居っぽいことが増えてきます。
今までは短いセリフを1人で演じたり、2人くらいで短い掛け合いをするぐらいでしたが、ここからはキャストを決めてじっくり演技を作りあげるレッスンが始まります。
ここで一つ、日ナレに入所している人の九分九厘は声優志望です。
しかし基礎科では声優のレッスンはしません。演技のレッスンをします。
つまりどういうことか。
しっかり動きをつけて演技をします。
声優というより舞台の演技をすることになるのです。
日ナレに入る→声優の練習をする→アフレコをする
こう考えている方も多いと思いますが、私のクラスは違いました。
がっつり芝居をします。
これが結果的に私個人としては良かったのですが・・・。
ちなみに台本は、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』のワンシーンでした。
当時の台本が残っていました。
色々書き込んでいますが、今見たら意味がわかりません。
「台の上へ」と書いている時点で超段取り芝居です。
こんな感じで演技のことなど全くわからず芝居をしていました。
しかしそれこそが、ある種の罠だったのかもしれません。
芝居のことがわからない
演技の初心者なら必ずぶち当たる壁があります。
それが「何をしたらいいのかわからない」という問題です。
具体的に言うと、何をどうしたらいいのかわからない、ということです。
つまりそんな感じです。
要するに動き方がわからないのです。
セリフを与えられて、それを上手い下手は除外して誰でも喋ることはできます。
しかしそのセリフに合った動きがわからない、というか動き方がわからないのです。
だから素人は棒立ちになったり、不自然な身振り手振りが多くなり、結果”下手くそ”に見えてしまいます。
しかし日ナレの先生はこれに関して何も教えてくれはしませんでした。
私はこの「動き方がわからない問題」ついて、後に別の方から教わるのですが、それはまた別の話。
ではどうしたか。
先生が全て決めてくれます。
「このセリフを言ったらこっちへ移動」とか「ここで振り返る」といった具合に決めていきます。
そしてそれを全グループ共通にします。
するとどうなるか。
全グループがほぼ同じ動きをして、ほぼ同じ演技をし、ほぼ同じダメ出しをされることになるのです。
今ならわかりますが、正直先生は楽で良かったと思います。
そこに個性やオリジナリティーというものはなかったので、ダメ出しも単調なもので十分ですし、相手は演技の初心者なのでそれで事足りるのです。
こちらの記事でも少し触れていますが、いわゆる没個性になります。
そして私たちは”基礎科”に入れられるほど、演技に関して素人なのです。
だからこのカラクリに気づくことができませんでした。
そうやってみんなで同じことをしていました。
それがその先生だったからなのか、そのクラスだったからなのか、基礎科だったからなのかわかりません。
「普通」に気付けるか
でも少しずつお芝居が楽しくなってきたのも、この時期くらいからだったように思います。
初心者ながら「演じる」について語り出すのもこの時期です。
もし今もう一度このレッスンを受けられるならば、たぶん色んなことを試して、しかけて、そして作り上げると思います。
ですが日ナレに通っていた当時は、「どれだけ上手にセリフを喋るか」ということしか考えていなかったように思います。
だから「間」とか行間の芝居というのは全くなかったし、セリフだけ一端のことを言っていますが身体がついてこない。
結果的にチグハグな芝居をしていました。
普通に考えたらわかりますよね。
「激怒している」人が棒立ちなんてあり得ないですから。
腕を動かしたり、地団駄を踏んだり、掴みかかったりしますよね。
それが普通なんです。
その普通をするのが芝居なんです。
しかし素人であれば素人であるほど、特別なことをしようとしてしまいます。
その結果、何をしたらいいかわからず棒立ちになりがちなのです。
しかしそうなると、
普通をする=没個性
に感じますよね。
ですがそこにも考え方があります。
それはまた別の機会に。
「セリフを上手く喋る」
それも決して間違いではないと思います。
しかしそれだけでは絶対に芝居にはなりません。
そして声優にもなれないと思います。
日ナレではそれに気づくことが出来なかったし、教えてくれなかったです。
教えてくれていたならごめんなさい。
もう少し先になると思いますが、私が師匠と崇める方から教わった芝居の考え方について、伝えられる限りを記していきたいと思います。
今はまだ日ナレに通っていた時の話をメインで考えています。
当時から今も変わっていない思いがあります。
それは、
「芝居って難しい」
でも楽しい!
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